【リファラル採用とは?】メリット・デメリット・課題・導入事例について転職者側・企業側それぞれでわかりやすく詳細に解説
社員が知人・友人を誘う採用活動を「リファラル採用」とい言い、近年取り組む企業が増えています。
企業側としては転職サイトや転職エージェントを通じて募集するより「リファラル採用」であれば自社のことを知っている社員が自友人・知人を誘うことでミスマッチを減らせる、というメリットがあるからです。
この記事では、「リファラル採用の現状について」、「リファラル採用の転職する側のメリット」「リファラル採用の企業にとってのメリット」、「リファラル採用を導入する企業の課題」について解説します。
実際にリファラル採用を導入している企業(トヨタ自動車、富士通、マネーフォワード、ビズリーチ )の事例も紹介します。
「エーマッチ」編集長。
ウェブマーケティング会社経営者。上場企業からスタートアップまで7回の転職経験を元に転職エージェントマッチングメディア「エーマッチ」を運営。
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リファラル採用とは?現状についても紹介
リファラル採用とは、社員が紹介(リファラル= 英語 referral)した人を採用選考する中途採用の方法です。
ここでは、リファラル採用について
- 新卒採用のリクルーター制度に近い
- 縁故採用とは違う
- リファラル(紹介)した社員にはインセンティブが与えられることも
- 日本企業の約6割がリファラル採用を実施している
の4つのポイントから解説します。
リファラル採用は新卒採用のリクルーター制度に近い
リファラル採用は、新卒採用の場合に社員がリクルーターとして大学のゼミやサークルの後輩に声をかけて採用活動するのに近い採用方式と考えるとわかりやすいでしょう。
新卒採用のリクルーター制度では、学生はリクルーターから会社の生の情報に接することができて、採用前に企業理解を深めることができます。
またリクルーターは早い時期に有望な後輩に接触して、人事担当者に繋げることができます。
リファラル採用では、社員からの紹介を通して、まだ転職活動をしていない優秀な人材に接触することができます。
紹介された側も、社員から企業の実情など生の情報を得て、企業のことをよく理解した上で転職を検討することができます。
リファラル採用と縁故採用(えんこさいよう)とは違う
リファラル採用は縁故採用とは異なります。
縁故採用は、会社と何かつながりのある人が紹介されるところまではリファラル採用と同じですが、紹介された人は企業となんらか利害関係があったり社内幹部の親族ということが多く、適性に関係なく採用されるのが一般的です。
これに対してリファラル採用では、社員から紹介された人とはいえ通常の採用選考を受けます。
そして社員から紹介されたからと言って、必ず採用されるわけでなく、選考の結果不採用、ということもありえます。
リファラル(紹介)した社員にはインセンティブが与えられることも
実際にリファラル採用を行なっている企業の中には、紹介した人の入社が決まると、紹介した社員に対してインセンティブ(報酬)を与えているところもあります。
インセンティブの具体例としては、金銭とお祝いディナーや人事評価の加点など金銭以外のものがあります。
日本企業の約6割がリファラル採用を実施している
「マイナビ 中途採用状況調査2020年版」によると、2019年にリファラル採用を行なった企業は62.9%でした。
日本ではリファラル採用はかなり普及していると言えますが、大企業はまだこれからというデータもあります。
日本経済新聞が2019年10月に実施した採用調査によると、大手企業でリファラル採用を導入したのは東京で19%、関西で13%に留まっています。
引用 日本経済新聞「社員が知人スカウト USJなど、首都圏から呼び戻し」(2020年1月21日)より
最近では、トヨタ自動車、富士通、日立製作所などの大企業がリファラル採用の導入を始めていて、今後リファラル採用の導入は大企業に広がっていくと見られています。
リファラル採用を利用した際の転職側のメリットについて
友人・知人からの紹介でリファラル採用を利用して転職をする際に、転職者側にはどんなメリットがあるのでしょうか。
大きく3つご紹介します。
実際に働いている知人から情報を聞けるのでミスマッチが起こりにくい
リファラル採用を利用する転職者側の一番のメリットは、実際に働いている友人・知人から企業の情報を聞けるので入社後に「イメージと違った」といったミスマッチが起こりにくくなります。
転職サイトや企業が自社で用意した求人募集ページからでは、企業側の都合の良い情報が多く、その情報のみで入社してしまうとミスマッチになってしまうことも。
とくに「社風」などは採用ページだけではわからないことが多くあります。
リファラル採用であれば「イメージと違った」といった転職失敗を防げます。
内定をもらいやすい
リファラル採用だから必ず内定を貰える、ということではありませんが、紹介する側も「この人ならウチの会社で活躍できそう」と見込んで話をしています。
リファラル採用の声が掛かった段階で、「内定を出せる可能性が高い人」とうことで選考を進めやすいはずです。
企業側も社員からの紹介のためある程度事前に能力や性格なども把握でき、安心して選考ができます。
入社後も社内に友人・知人がいるので安心
一般的な採用活動で入社した場合、一から社内の人間関係の構築する必要があります。
また前職と違った職場の雰囲気に慣れる必要があるため、入社直後はストレスや不安が多くあります。
しかしリファラル採用の場合、友人・知人が社内にいるため人間関係も構築しやすく、馴染みやすい環境になります。
業務の進め方も友人・知人がいるため聞きやすく安心して取り組めるようになります。
リファラル採用は企業側にどんなメリットがあるのか?
転職者側に多くのメリットがあるリファラル採用ですが、企業側にもメリットが多くあります。
そのためリファラル採用は日本で広がりつつあり、アメリカの企業では既にリファラル採用がメインの採用方法になりつつあります。
- 採用のミスマッチが起こりにくい
- 採用コストを削減できる
- 転職市場にいない人材を採用できる可能性がある
- ニッチな分野で人材採用のチャンスが増える
参考サイト Jeff Hyman 「Let’s Toast The Holy Grail Of Hiring」Forbes 2019年1月30日
採用のミスマッチが起こりにくい
- 紹介する側の社員は「この人なら向いている」という人を紹介する
- 紹介される側の人は、紹介する社員から会社について生の声を聞いて理解した上で応募する
ために、採用のミスマッチが起こりにくくなっています。
その結果、採用した人が「こんなはずではなかった」という理由で離職する確率が低くなります。
採用コストを削減できる
中途採用で人材を募集するとき、求人募集を転職サイトに掲載したり、転職エージェントに依頼するとコストがかかります。
リファラル採用は、社員の紹介で人材募集という形式になるので、転職サイトや転職エージェントのコスト分を削減することができます。
またリファラル採用した人材はミスマッチによる離職のリスクが低いので、「せっかく採用した人がすぐに辞めてしまったので再募集」というコストも削減できます。
転職市場にいない人材を採用できる可能性がある
すでに転職活動を始めている優秀な転職希望者は複数の企業による争奪戦になるので、なかなか採用が難しいという問題があります。
リファラル採用の場合は、まだ転職を考えていない優秀な人材にアプローチできるのがメリットです。
ただし、転職市場に出ていない人材が実際に転職を考えるまでに時間がかかることがあるので、すぐに人材が必要というケースには向きません。
ニッチな分野で人材採用のチャンスが増える
ニッチな分野での人材が必要な時に、広く転職市場から人材を探すのは容易ではありません。
リファラル採用なら、その分野で仕事をしている社員が、同じ分野で活躍している知り合いに声かけして効率的に人材を見つけることができます。
リファラル採用する企業の課題は何か?
メリットも多くコストをかけずに優秀な人材を獲得できるリファラル採用ですが、企業が実施するのあたって以下のような課題があります。
- 円滑な実施のためにリファラル採用を制度化する必要がある
- 採用に至らなかった場合にフォローが必要になることも
- 採用後も人間関係の配慮が必要
- 似たような人材が集まるリスクも
円滑な実施のためにリファラル採用を制度化する必要がある
ただ社員に「知り合いを紹介しろ」とハッパをかけるだけでは、リファラル採用の円滑な実施は難しいです。
- 社員にリファラル採用について周知徹底させる
- 社員に「募集するポジション」と「欲しい人材」について理解を促す
- 専用ホームページを立ち上げる、または、リファラル採用サービスを利用する
- インセンティブ(報酬)の有無、内容を決める
など、きちんとリファラル採用を社内の制度化する必要があります。
採用に至らなかった場合にフォローが必要になることも
リファラル採用の場合は、紹介した人が不採用になることもあります。
不採用になったために、紹介した社員と紹介された人の人間関係が悪化することも。
- 「紹介したい人がいるけれど、不採用になったら人間関係が悪くなるかも」
- 「せっかく紹介してもらったけれど、不採用になったら申し訳ない」
という理由でリファラル採用が機能しなくなるのは避けなければいけません。
そのためには、
- 採用結果を負担に感じなくて済む紹介&応募方法
- 不採用になった場合に人間関係をフォロー
というような対策が必要になります。
採用後も人間関係の配慮が必要
リファラル採用で採用された人と紹介した社員の人事配置に配慮が必要になります。
- 知り合い同士が固まって派閥化してしまった
- 直属の上司が紹介した人と仕事をするのは気を遣う
など、職場環境に悪い影響を与えないような対策が求められます。
似たような人材が集まるリスクも
紹介された知り合いは、考え方や性格が紹介した社員に似ている傾向があると言われています。
同じような人材が集まると、組織としての活力が落ちてしまうことも。
とは言っても、「優秀な人材が優秀な人材を呼ぶ」という側面もあるので、絶対デメリットというわけではありません。
リファラル採用を導入する際には、多様な人材が集まる部署にしたいのか、同じような専門家が集まる部署にしたいのかなど、ビジョンをまず決める必要があります。
リファラル採用を行っている企業事例
ここではリファラル採用を導入している企業の事例を紹介します。
トヨタ自動車株式会社
トヨタ自動車は2020年6月にリファラル採用を導入しました。
全ての職種が対象ですが、特に、次世代車開発に必要なIT関連人材の獲得に主眼を置いています。
トヨタ自動車の従業員が、紹介したいと思う人にトヨタ自動車公式サイト内にあるキャリア採用のページを紹介します。
紹介された人はそのページから応募して、採用選考に臨む、という流れになっています。
トヨタ自動車のリファラル採用は、紹介した社員に対するインセンティブ(報酬)がありません。
参考サイト トヨタ自動車株式会社公式サイト「リファラル採用」
参考サイト トヨタ社員紹介で即戦力 リファラル採用 次世代車向け人材獲得(読売新聞オンライン)
富士通株式会社
富士通では2018年からリファラル採用を行なっています。
AI、IoT、クラウド、セキュリティなどの最先端分野で高い専門性を持つ人材の確保を狙っています。
富士通の場合は、
- 社員が知人を紹介する
- 転職希望者が富士通の社員に「紹介してもらえないか」と声をかけて求人に応募する、
という2つのルートでリファラル採用を行なっています。
社員向けにはリファラル採用専用のホームページで情報を提供しています。
また、社外向けには公式サイトの採用情報ページにリファラル採用の情報を記載して、見た人が富士通の社員に「紹介してほしい」と声をかけて求人に応募できるようになっています。
インセンティブ(報酬)は、採用活動へ協力した謝礼として10万円です。
参考サイト 富士通株式会社公式サイト キャリア採用情報 リファラル採用制度
参考サイト MyRefer HR Lab「富士通が3万3千人の全社員に展開してリファラル採用に取り組む理由」「大手企業が陥るリファラル採用の壁とは?~富士通登壇セミナーレポート~」
株式会社マネーフォワード
インターネットサービスの開発を手掛ける「株式会社マネーフォワード」は2015年にリファラル採用を制度化して導入しています。
マネーフォワード社ではこの制度を利用して、「子が親を」「社員が配偶者」を紹介して入社するケースもあります。
マネーフォワード社の社員が、紹介用のカード「GOENカード」を紹介したいと思う人に渡します。
カードをもらった人は、カードに記載されているQRコードから専用の応募ページにアクセスする、という仕組みになっています。
インセンティブ(報酬)は、紹介した人が入社して3ヶ月勤務した時点で、紹介者に50万円が支払われます。
参考サイト 株式会社マネーフォワード社公式サイト「リファラル採用の体験について本気になって考えた。『GOENカード』が生まれるまでの話。」
参考サイト ダイアモンドオンライン『「親子、夫婦が続々入社」マネーフォワードのリファラル採用がうまくいく理由』
株式会社ビズリーチ
ハイクラス向け転職サイトを運営する「ビズリーチ」の運営会社株式会社ビズリーチでは、創業時からリファラル採用を行なっています。
ビズリーチ は、「事業創りは仲間探し」というキャッチフレーズのもと、「リクプロ」と呼ばれるリクルーティングプロジェクトとしてリファラル採用を積極的に行なっています。
成果をあげたリクルーターは表彰されて、ディナーをプレゼントされます。
参考サイト Refcom「「事業創りは仲間探し」ビズリーチ社のリファラル採用成功の秘訣とは?」
リファラル採用について まとめ
コストを抑えて優秀で離職率が低い人材を採用できるリファラル採用は大企業まで広がりつつあります。
リファラル採用は転職者にもメリット多い転職方法です。
リファラル採用を導入するに企業側は、きちんと制度化して採用になった場合も不採用になった場合も人間関係に配慮する、などの課題があります。
そして、何よりも、社員にとって魅力的な企業である続けることで、社員が自信を持って「うちの会社に来ない?」と知人に声をかけることができるようになります。
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