今注目の「ダイナミックプライシング」とは?はじめて聞く人にもわかりやすく基本から解説します!
ダイナミックプライシングというのは、需要と供給のバランスから最適な価格を設定する価格戦略のことです。
最近いろんな分野で導入されるようになってきていますが、なぜこれだけ注目されているのでしょうか。
ダイナミックプライシングの基本と、その可能性と問題点についてわかりやすく解説します。
— やまだ|転職コンサル (@tenshokuz) April 25, 2020
「エーマッチ」編集長。
ウェブマーケティング会社経営者。上場企業からスタートアップまで7回の転職経験を元に転職エージェントマッチングメディア「エーマッチ」を運営。
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ダイナミックプライシングとは?
ダイナミックプライシング新しい言葉のように思えますが、実はずいぶん前から私たちの生活に深く関わっています。
例えば飛行機やホテルは夏休みや年末年始といった繁忙期には利用料金が高くなります。
逆に、平日は利用料金が低く設定され、安く利用することができます。
こういった利用頻度や空き状況によって価格が変動することを、ダイナミックプライシング(Dynamic Pricing)と呼びます。
DP(Dynamic Pricing)と略されることもあるので、頭の片隅においておきましょう。
ダイナミックプライシングとは「時価」のこと
お寿司屋さんでも、仕入れ状況によって価格が変わる「時価」と呼ばれる値札が付けられていることがあります。
実はこれもダイナミックプライシングの一種です。
同じ商品であっても希少になれば価格が高くなり、在庫に充分余裕がある時はより買いやすくなるように価格が低く抑えられるのです。
寿司屋の場合その日の仕入れ値が高いから売値も高いという考え方が強いが、今の「ダイナミックプライシング」は欲しい人が多い=値上げ、欲しい人が少ない=値下げ、といった価格を変動させることにつかわれている。
なぜ今ダイナミックプライシングが注目されているのか
ダイナミックプライシングの考え方は、昔から私たちの身の回りにあったわけですが、なぜ急に注目されるようになったのでしょうか。
その理由について解説します。
AIの導入
近年発展が目覚ましい人工知能、すなわちAI。
そのAIがダイナミックプライシングをコントロールすることにより、価格設定の精度が上がり、より細かく価格を管理することができるようになりました。
ダイナミックプライシングを取り入れる業種も多岐に渡り、様々な購入場面で目の当たりにすることが増えてきているのです。
今やAIとダイナミックプライシングは切り離せないのです。
ビッグデータへのアクセス環境が整ってきた
PCやスマートフォンといったデジタルデバイスを各個人が持つようになり、ダイナミックプライシングによって提供されるお得なサービスなどをタイムリーに届けることができるようになりました。
例えば「今日のお買い得はコレ!」といったメールやクーポンを商品者に直接すぐに届けることができるようになったのです。
デジタルデバイスの普及によって、ビッグデータを利用したサービスにアクセスしやすくなった今だからこそ、ダイナミックプライシングが注目され始めたのです。
ダイナミックプライシングでできること
ダイナミックプライシングで売り手にとっても買い手にとっても最適な価格を提供できるということはわかりました。
そうすることによって、どんなメリットがあるのか具体的に解説します。
利益の最大化
「欲しい」商品は、多少高くでも消費者は買います。
また「いらない」商品であっても、価格が低く抑えられて「お買い得品!」と表示されていたら、つい購入してしまうものです。
ダイナミックプライシングにより人気のある商品は高く、あまり人気のない商品でも売れるように最適な価格=セール価格をつけて販促することによって、利益の最大化を狙うことができます。
不要在庫の軽減
とくにコンビニやスーパーのお弁当の作りすぎを防ぐ効果も期待されています。
平日はお弁当100個つくり、価格は450円に設定。
行楽日和であれば、お弁当150個つくり、価格は500円に設定。
逆に雨の日はお弁当を50個におさえ、価格は400円とセール価格を打つ、といった具合に、価格と一緒に作る個数もコントロールできるのです。
ダイナミックプライシングによって、問題となっている食品ロスも減らすことができると期待されています。
価格変更作業の負担軽減
実はこれまで価格変更作業はベテランスタッフの仕事でした。
取り扱う品数が多ければ多いほど、その作業量は増え、スタッフへの負担も増えます。
しかし、価格変更をAIによるダイナミックプライシングに任せることができれば、スタッフの負担を軽減でき、現場での接客や陳列などの作業に時間をかけることができるようになるのです。
不正転売を減らす効果が期待できる
浜崎あゆみさんのライブのチケットがダイナミックプライシングで販売されました。
売れ行きによって定期的に価格が変動するシステムです。
この仕組みを導入することにより、不正転売が防げると考えられていました。
例えば、土日のチケットで高騰が予想されたが実際にはそこまで人気がなかった場合、価格が下がっていくことがありえるため、不正転売による利益を予測しにくいのです。
実際、これまで高額転売でチケットを購入できなかったファンも、今回は適正価格でチケットを購入できるようになりました。
参考 ダイナミックプライシングって何?(NHKサクサク経済Q&A)
ダイナミックプライシングの事例
様々な業界・業種でダイナミックプライシングが導入されてきています。
その一部をご紹介します。
スーパーマーケット- Albert Heijn(アルバート・ハイン)
アルバート・ハインはオランダ最大級のスーパーマーケットチェーンです。
イスラエルのダイナミックプライシング開発企業と共同で、AIを用いたダイナミックプライシングの実証実験が行われました。
目的は食品の廃棄ロス削減です。
売れ行きや天候、賞味期限、来店客数、在庫数などの情報をもとに電子値札の表示価格をタイムリーに変更します。
ローソン
ローソンでは値引きの代わりにポイントを還元する方法で、ダイナミックプライシングに取り組んでいます。
消費・賞味期限が近い商品があれば、その対象商品を買うとポイントがもらえるといったお得な情報を、登録されているLINEアカウントに届けるという仕組みです。
食品ロスの軽減と、効率的な値引きによる購買意欲・消費者サービスの向上が狙いです。
横浜F・マリノス
人気チームとの対戦、土日開催、気候などによって、チケット価格が変動するダイナミックプライシングを導入しました。
反対に売れ行きが芳しくない試合は、チケット代を値下げすることにより観戦のハードルを下げ、集客と収益を狙います。
試合会場の座席数によってもチケット代を細かく精査することができるので、空席を少なくする効果も期待されます。
USJ
ユニバーサル・スタジオ・ジャパンのチケット変動制導入も話題になりました。
入園者が少ない時期は安くおさえ、夏休みなどで入園者が増える時期には入園料金が高く設定されます。
消費者にとっては時期をずらして安く行くことが可能ですし、USJにとっては繁忙期により高い収益を見込めます。
参考 1日で500円値下がり USJが始めた「価格変動制」の裏側(日経クロストレンド)
ダイナミックプライシングの問題点
ダイナミックプライシングの理想は、企業と消費者の両者が満足できる価格設定です。
しかし、AIを導入することにより、様々な問題点も指摘されています。
AIの知識と統計学が必要
AIによるダイナミックプライシングは、AIの知識と統計学が求められます。
専門企業に外部委託せざるを得ず、結果コスト増となることもあります。
また、新たなシステム開発、電子タグの普及など、乗り越えなければならない課題が多くあるのです。
自然災害時の対応
トイレットペーパーなどの日用生活品が、災害などの自然環境の変化によって価格が高騰するということが実際に起きました。
たとえデータや需要に照らし合わせた上での値上げだったとしても、高すぎて買うことができず、生活に困ってしまうようでは適切とはいえません。
AIは機械的であるがゆえに、危機的状況下においてはダイナミックプライシングを適用してはいけないでしょう。
価格更新の頻度が上がりすぎる
AIが自動的に価格を変動させてしまうので、仕組みが整っていないと「レジに持っていったら価格が上がっていた」というケースも起こりえます。
ダイナミックプライシングによりあまりに頻度が高い価格変動は適切ではありません。
消費者満足度が下がる
とあるホテルで繁忙期であるがゆえに通常10,000円の部屋が15,000円で販売されていたとします。
その部屋に泊まった人は「15,000円の価格に見合った部屋・サービスではない」と不満に思うかもしれません。
ダイナミックプライシングにより商品の本来価値と価格の乖離が大きすぎると、消費者の不満につながります。
企業に対する不信へとつながり、消費者離れを引き起こしかねません。
ダイナミックプライシングに求められていること
ダイナミックプライシングは企業と消費者両方にとって満足度の高い価格設定をすることが求められています。
そのためにはどのようなことが必要なのでしょうか。
価格を変更したことの結果を適切に評価する
ダイナミックプライシングによって価格を変更したことによる結果を、都度確認することが必要です。
価格変更したことが良かったのか、悪かったのかをきちんと判断できないと、顧客満足度が下がり、ひいては企業評価の低下に及びます。
ダイナミックプライシングによって悪いことも起こりうると想定した上で、PDCA(計画・実行・確認・改善)を繰り返していくことが大切です。
企業収益の向上だけでなく、顧客満足度と企業収益のバランスが大切なのです。
ダイナミックプライシングは今後様々な分野で導入されていく
ダイナミックプライシングによって、企業利益の最大化、および顧客満足度を上げることが期待されています。今後は小売業のみならず、様々な分野において導入されていくでしょう。
高速道路でダイナミックプライシングを導入したら、閑散期(夜間など)は利用料金を低く抑えることができ、物流コストを下げることが可能になります。また利用料金が高くなる繁忙期を避けるため、渋滞が起こりにくくなるでしょう。カフェで導入されたら混雑時は高く、空いているときは安く、となると混雑緩和・売上アップにもつながりそうです。
ダイナミックプライシングには様々な利益をもたらす可能性があります。
一方で「金持ちは買えて、貧乏は買えない」といった不公平を招く危険もはらんでいます。
貧富の格差が更に広がりそう
金持ちは買えて、貧乏は買えない貴重品が増えるってことやんな?
AIにまぎれて、違法な値段設定する企業とかも現れそう
「AIのせいなんですー」ダイナミックプライシングって何?:日本経済新聞 https://t.co/fDdMkSRmiM
— らむ@読書_#らむどく (@ram_0405) March 16, 2020
資本主義そのものの考え方とも言われるダイナミックプライシングは導入して終わりではなく、運用し続ける中で常にPDCAをまわして最適化をはかっていく企業努力が必要なのです。
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