やりがいのある仕事とは?心理学的に解明されたやりがいを感じる5つの要素から仕事にやりがいを見い出す
「やりがいのある仕事」ってどんな仕事なのでしょうか?
「好きなこと」や「やりたいこと」を仕事にできたら、理想の「やりがいのある仕事」になります。
でも現実には誰でも「好きなこと」や「やりたいこと」を仕事にできるわけではありません。それができない人は「やりがいのある仕事」に就けないのかというと、そうではないのです。
「やりがいのある仕事」とは実は心理学的に解明されています。
その5つの要素を抑えることで自分で仕事にやりがいを見つけ出すことができます。
この記事では、仕事にやりがいを感じるための5要素、やりがいのある仕事はどんな仕事なのか、について紹介します。
また、今の仕事にやりがいを見つける方法、仕事にやりがいが見つからない場合、についても解説します。
「エーマッチ」編集長。
ウェブマーケティング会社経営者。上場企業からスタートアップまで7回の転職経験を元に転職エージェントマッチングメディア「エーマッチ」を運営。
転職ノウハウだけではなくビジネス全般、キャリアアップ、独立起業、最新ビジネスニュースなどをお届け。
やりがいのある仕事には5つの要素があった
1976年にアメリカで発表された論文”Motivation through the Design of Work: Test of a Theory”の中で、やりがいを感じる仕事の要素として、以下の5つを挙げています。
やりがいを感じる仕事
- Skill Variety:さまざまなスキルを必要とする
- Task Identity:最初から最後までかかわれる
- Task Significance:周囲への良い影響力を持つ
- Autonomy:裁量が与えられている
- Feedback:フィードバックが得られる
この論文では、1~3の中から最低でも一つ、そして、4と5の要素が揃うと仕事のやりがい、パフォーマンス、満足度が高まるというワークデザインのモデルを提唱しています。
その後2007年にアメリカの応用心理学の学術誌に発表された”Integrating Motivational, Social, and Contextual Work Design Features:A Meta-Analytic Summary and Theoretical Extension of the Work Design Literature”で、別の研究者がワークデザインに関する膨大な文献の分析を行い、その中にこれら5つの要素も含まれていました。
その結果、これら5つの要素はやはり仕事の満足感ややりがいの大きさに強く関係していることがわかりました。
参考文献:
- Humphrey, S. E., Nahrgagn, J. D., & Morgeson, F. P. Integrating Motivational, Social, and Contextual Work Design Features:A Meta-Analytic Summary and Theoretical Extension of the Work Design Literature Journal of Applied Psychology 2007, Vol. 92, No. 5, 1332–1356
- Hackman, J. R., & Oldham, G. R. Motivation through the Design of Work: Test of a Theory ORGANIZATIONAL BEHAVIOR AND HUMAN PERFORMANCE 16, 250-279 (1976)
以下では、これらの論文(Motivation through the Design of Work: Test of a Theory)に基づいて、5つの要素を紹介します。
要素1:さまざまなスキルや能力が必要な仕事
一つの仕事をする中で、さまざまなスキルや能力が必要とされると、人はその仕事を意味のある仕事として感じる傾向にあります。
すでに持っているスキルが必要とされるだけでなく、新たなスキルにチャレンジできて能力を伸ばすことができるとなおさらです。
要素2:最初から最後まで関われる仕事
一つの仕事を行うにあたって、最初から最後まで関わることができて、目に見える結果を出すことができることで、意味のある仕事を行なったと感じる傾向にあります。
これに対し、一つの仕事の中の一部分のみ担当していると、仕事の結果が目に見えにくくなり、満足感が少なくなります。
要素3:周囲への良い影響力をもつ仕事
仕事の結果が周囲の人々に良い影響を与えて役に立っていると感じる時も、人は仕事を意味のあるものと感じる傾向にあります。
論文の調査では、航空機の生産ラインでブレーキのナットを締める作業をしている人の方が、クリップの箱詰め作業をしている人よりも仕事を意味のあるものと感じている、という結果になっています。
要素4:裁量が与えられている仕事
裁量が与えられている仕事というのは、仕事にある程度の自由や独立性があり、仕事のスケジュールや手順の決定が個人の裁量に委ねられている仕事です。
この場合、仕事の結果は仕事をする人の努力、主導力、決定力が重要になります。
なので、上司の指示通りに仕事をしたり、単純作業をずっと続けている人よりも、仕事に対する責任感を強く感じる傾向にあります。
要素5:フィードバックが得られる仕事
行なった仕事の結果を知ることで、仕事のやりがいを感じやすくなります。
仕事の結果が評価されて、それを直接知ることができる(=フィードバック)ことが重要です。
上司やマネージャー職の人は部下にこのできるだけこの5つを与えることでやりがいをもって仕事してくれるぞ。
まずは今の仕事に「やりがい」の要素を見つけよう
「仕事にやりがいをまったく感じない」
「今の仕事は自分に向いていない」
と仕事に悩んでいる人は多くいます。
それは今の仕事に「やりがいを感じる5つの要素」が無いからです。
そこで仕事を変えれば解決するのでしょうか?
でも実際に仕事にやりがいを感じている人の話を聞くと業種や職種はさまざまです。
「やりがいを感じる5つの要素がある仕事はこれ!」というのはないのです。
同じ仕事でも会社や環境によって「やりがい要素」がある・無しがあるからな。
転職を考え「この業界面白そう!」と「まえからやってみたい仕事だった」と思って転職してもやりがいを感じる5つの要素がなければ、結局「仕事にやりがいがない」とまた転職を繰り返す羽目になります。
今の仕事にやりがいが無いからといって安易に転職するより、まずは今の仕事でこのやりがい5つの要素を見い出すことができないか、考えてみましょう。
「自らスキルアップするために新しい技術や知識を学んで見る」
「社内の新規プロジェクトに立候補してみる」
これだでけでも今の仕事に新しいやりがいを感じることができるかもしれません。
「やりがい5つの要素」を利用したブラック企業の「やりがい搾取」に気を付ける
ただしブラック企業の「やりがい搾取」には気をつけてください。
「やりがい搾取」というのは、企業が従業員に「やりがい」という概念だけを押し付けて働かせ、それに見合った給与を支払わない、というまさにブラックなケースです。
教育社会学者の本田由紀教授によって名付けられました。
本田教授によると、やりがい搾取が行われやすい企業の特徴として下記の5つがあります。
- 自分の好きなことを仕事にする趣味性
- 裁量に基づいて成果を最大化するゲーム性
- 顧客のニーズに最大限応えようとする奉仕性
- 高揚した雰囲気や身ぶりで巻き込むカルト性
- 崇高な価値や魅力、美を追究する神聖性
「仕事にやりがいを感じる5つの要素」にどことなく似ていますよね。
やりがい5つの要素で「4.裁量が与えられている仕事」で自分で休みをコントロールできたり、「5.フィードバック」が給与・報酬で返ってこないと、ただのブラック企業になりかねません。
「やりがい」という言葉につられてブラック企業の「やりがい搾取」にハマってしまうと、肉体的にも精神的にも健康を害してしまうこともあるので、気をつけてください。
引用:本田由紀「軋む社会—教育・仕事・若者の現在」 河出文庫 2011年
転職するなら「やりがいのある仕事」の方がいい
もし今の仕事内容ではどうしても「やりがいを見いだせない」というのであれば転職も考えましょう。
やりがいの無い仕事を何年も続けるのは時間がもったいない
転職するなら「やりがいのある仕事」の方がいいのは確かです。
ただし転職先が「やりがいを感じつ5つの要素」がある会社かどうかをある程度見極めなければなりません。
ここでは、「やりがいを感じる5つの要素」それぞれを見い出すお手伝いをするために、ヒントやコツを紹介します。
「さまざまなスキルや能力が必要な仕事」ってどんな仕事?
「さまざまなスキルや能力が必要な仕事」というと何か特別な仕事のように感じますが、そんなことはありません。
たとえば事務職の仕事は単調だという人もいますが、
- PCスキル
- コミュニケーション能力
- 仕事の正確さ
- スケジュール管理能力
- 臨機応変な対応力
- トラブル解決能力
- ビジネスマナー
- 情報収集力
というような多くのスキルや能力が必要とされる仕事です。
ただしこれらのスキルや能力はその職種の経験を重ねる中で得ていくものです。
どんな仕事でも多種多様なスキルや能力を必要とします。
「最初から最後まで関われる仕事」ってどんな仕事?
最初から最後まで関われる仕事というのは、製造業などの最初の設計から製品の完成まで全ての工程に関われる仕事をイメージします。
ただ、このような仕事は、仕事の規模が大きい大企業になり、大企業では「製造工程の一部」だけになります。
中小企業や創業間もないベンチャー企業の方が、仕事で最初から最後まで関われる可能性が高いです。
またプランナーとかコーディネーター という名称の仕事(ウェディングプランナー、人材コーディネーターなど)はプランニングから最後まで関われる仕事です。
ただし未経験でこれらの仕事に就く場合は、最初からすべての工程に関われるわけではありません。
ある程度経験を積むことが必要です。
「周囲へ良い影響力をもつ仕事」ってどんな仕事?
周囲へ良い影響力をもつ仕事というのは、役に立っていると感じられる仕事のことです。
たとえば、医療や福祉・介護の仕事は、人の命や健康のために役立っているので、激務ながらやりがいや強い使命感をもって仕事をしている人が多い事です。
それ以外には、警察、消防、教育関係、法律関係、ライフラインのインフラなども社会に貢献していると感じやすい仕事です。
上記の仕事は直接社会に貢献するので役に立つ仕事としてわかりやすいですが、実はどんな仕事でも取り扱う商品やサービスがさまざまな形で社会に役立っています。
そもそも社会の役にたってない会社は売上が続かず事業継続が難しいからな。
仕事の工程の一部しか担当していないとなかなか役に立っていることを感じにくいかもしれません。
そういう時は、一度物の見方を変えて、もっと大きな視点から今の仕事を見ることで、役に立っていると感じることができるかもしれません。
社会という大きな規模でなくても、会社の組織内で役に立っていると感じることができれば、十分にやりがいを感じることができるはずです。
「裁量が与えられている仕事」ってどんな仕事?
未経験の職種であれば、仕事で裁量が与えられるようになるまでは時間がかかります。
未経験の転職の場合、すぐに裁量が与えられている仕事に着くのは難しでしょう。
ただ経験者として、さらには管理職として転職するなら、裁量が与えられている仕事をすぐに始めることになります。
また起業して間もないベンチャー企業や社員数の少ない中小企業に転職すると、最初から裁量が与えられている仕事を任される可能性があります。
「フィードバックが得られる仕事」ってどんな仕事?
マーケティング職や営業職は売上というわかりやすいフィードバックがあります。
投融資業務ならば、投融資の結果が数字でフィードバックされます。
これに対して、
- 「クレーム対応が迅速にできてほめられた」
- 「お客さまへのサービスを喜んでもらえて感謝された」
というような、売上のような数字という形でなくても、「お礼や感謝の言葉」もポジティブなフィードバックになります。
顧客から直接フィードバックを得やすいのは接客業(宿泊・レジャー施設スタッフ、飲食、小売、美容など)です。
またフィードバックは売上だけではなく、会社や上司、同僚からの評価も「やりがい」を感じる大事なポイントです。
人事制度が整った会社、というのも転職の際非常に大事なポイントなります。
自分の仕事が正しく評価されないとやりがい感じなくなってしまうからな。
「やりがいのある仕事」よりも「やりがいのある趣味」を持つのもアリ
仕事にやりがいを感じる5つの要素を紹介しましたが、それでは仕事にはやりがいがないとダメなのでしょうか?
実際にはすぐに「やりがいを感じる5つの要素」をすぐに仕事に見い出すのは難しいが現実です。
仕事に裁量を持つことができたり、周囲へ大きな影響を与えられるようになるまである程度のキャリアが必要です。
とくに20代の若手のうちはなかなか難しいからな。
そこでやりがいのある仕事で満足感を得るのと同様に、「仕事にやりがいは感じないけれど、給料をしっかりもらってプライベートにやりがいを見い出す」のもアリです。
プライベートの時間に「やりがいのある趣味」を持つ方がいい、と考えも良いのです。
内閣府の調査によると働く目的は「お金を得るため」が1位
内閣府によって行われた「平成30年度国民生活に関する世論調査」によると、「働く目的は何か」という質問に対して「お金を得るために働く」と答えた人が一番多い、という結果になりました。
順位 | 働く理由 | 割合 |
1 | お金を得るために働く | 53.9% |
2 | 生きがいを見つけるために働く | 18.6% |
3 | 社会の一員として、力を果たすために働く | 14.3% |
4 | 自分の才能や能力をはっきするために働く | 8.9% |
5 | わからない | 4.3% |
(内閣府「国民生活に関する世論調査 平成30年」図24-1より作成)
いまの仕事にやりがいを感じがなくても、まずは「お金を得るために働く」で大丈夫です。
やりがいのある仕事は何年も働いて見つけることができることもあるから
やりがいのある仕事に関するよくある質問
やりがいのある仕事に関するよくある質問をまとめています。やりがいのある仕事について疑問や質問があるかたはぜひご覧になってください。
やりがいのある仕事について まとめ
「仕事にやりがいを感じる5つの要素」を紹介しました。
もともとは、1970年代にアメリカの研究者が
- 仕事のやりがいを大きく
- 仕事の実績を高く
- 仕事の満足度を高く
- 無断欠勤を少なく
するようなワークデザインのモデルとして提唱したものです。
「好きなこと」や「やりたいこと」を仕事にできたら理想です。
でも誰でも今の仕事にやりがいを感じる5つの要素を見つけることで、仕事を「やりがいのある仕事」に変えていくことができます。
また今はプライベートを充実させ、ある程度の経験を積んでから仕事にやりがいを見い出すというのもアリです。
仕事・転職で悩んでいるなら
適職診断受けてみよう
- 「正直いまの仕事が合っていない」
- 「自分にどんな仕事が自分に合っているのかわからない」
- 「仕事が辛い・辞めたい」
そんな人は無料の「適職診断」を受けることで自分に合った仕事を知ることができます。
ぜひ診断を一度受けてみましょう。
適職診断を受けて自分自身を知ることが仕事・転職では一番大事だ。