【退職手続き完全マニュアル】意外と知らない退職するときに必要な書類一式と退職後の手続きについて全知識
会社を退職するには入社のときと同様にさまざまな手続きや必要書類があります。
退職・転職は人生で何度何度ももあるわけではありませんので、退職手続きの流れを正確に把握し、計画的に進めれる人はあまりいません。
私は7回退職しているからな。
…退職手続きってまわりの人にも聞きにくいですしね。
ということで今回、退職手続き全体像についてご紹介します。
「自己都合」「会社都合」また「転職先が決まっている場合」「決まっていない場合」とケースごとにわかりやすく解説していきます。
\退職で悩んでいるなら/
「エーマッチ」編集長。
ウェブマーケティング会社経営者。上場企業からスタートアップまで7回の転職経験を元に転職エージェントマッチングメディア「エーマッチ」を運営。
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「退職手続き」全体の流れについて確認しよう
会社への退職通知を行い、了承を得ることができたら退職手続きに進みます。
ここでは、退職手続きを「退職する日まで」「退職後の手続き」と下記2つのケースに分けて解説します。
退職が決まったら、まずは以下の事項について把握しておきましょう。
「自己都合で退職」「会社都合で退職」で退職手続きは異なる
退職する日までの手続きは、「自己都合で退職する場合」と「会社都合で退職する場合」で異なります。
それぞれ退職日までに必要な手続きについて解説しています。
また、「自己都合」と「会社都合」両方の場合に共通する4つの退職手続きも紹介します。
自己都合で退職する場合の退職手続き
自己都合で退職する場合、退職手続きの流れは以下のようになります。
退職手続きの流れ
STEP1. 退職通知後、退職日の決定
自己都合で退職する場合は、会社に対して「退職します」という意思を伝えてから退職日を決定します。
尚、民法では「期間の定めのない雇用契約」については退職届け出して2週間後に辞めることができます。多くの会社員・パートアルバイトは期間を定めず雇用契約を結んでいます。
第六百二十七条 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。
e-Gov民法第六百二十七条
この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
2 期間によって報酬を定めた場合には、使用者からの解約の申入れは、次期以後についてすることができる。ただし、その解約の申入れは、当期の前半にしなければならない。
3 六箇月以上の期間によって報酬を定めた場合には、前項の解約の申入れは、三箇月前にしなければならない。
会社の「就業規則」より「民法」のほうが優先されるものの円満に退職するためには、まずは会社の就業規則に従いましょう。
もし「退職は半年前じゃないと認めない!」とかいう無茶苦茶な会社だったら労働基準監督署などの相談しよう。
- どうやって退職の通知すればいいの?
-
退職の意思を会社に伝える方法についてもまずは就業規則にしたがいましょう。
とくに決まりがない場合は口頭でも書面でもOKですが、「退職届」という形で書面を会社に提出した方が、トラブル防止や後の手続きがスムーズに運びます。
STEP2. 退職届を会社に提出する
退職日が決まったら、退職届を会社に提出します。
退職届は一度提出したら撤回できない書面です。また退職届は会社によって書式や提出先が異なるので、人事や直属の上司によく確認してください。
会社都合で退職する場合の退職手続き
会社都合で退職する場合、退職手続きの流れは以下のようになります。
退職手続きの流れ
STEP1. 会社から労働契約を終了する通知後、退職日の決定
会社都合で退職する場合は、会社から労働契約を終了するという通知を受けて、退職日を決定します。
- いつ退職日は通知されるの?
-
会社は労働契約の終了を30日前に通知しなければなりません。
これは労働基準法で明確に定められています。
第二十条 使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。
三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。
但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。
引用 e-Gov労働基準法第二十条
もし30日以内に辞めてもらう場合は会社は30日分以上の賃金を支払わなけれなりません。
「今日でクビ!給料も今日までしか払わない!」というのは認められません。
即日解雇で給与払わない、という場合も労働基準監督署や弁護士・社労士に相談しましょう。
- どうやって退職の通知されるの?
-
会社都合での退職通知についても決まりはないので、口頭、書面どちらもあります。
STEP2. 会社都合の場合は「退職届」は提出しない
会社都合で退職する場合は退職届を提出しません。
退職届を提出すると自己都合で退職したとみなされてしまいます。
退職理由が会社都合の場合5つのメリットがあるからです。
- 失業給付金の受取日数が自己都合で退職した人の2倍くらいの長さになり受取金額が多くなることも
- 失業給付金の支給日が自己都合で退職した人より3ヶ月早い
- 国民健康保険料を軽減してもらえる
- 自治体によっては住民税を軽減してくれる
- 国民年金保険料の軽減、納付猶予、追加納付ができる
離職票と退職証明書の発行を会社に依頼する
自己都合の場合でも、会社都合の場合でも、退職日までに会社に離職票と退職証明書の発行を依頼します。
離職票は失業手当をもらうために必要な書類です。
転職先が決まってる場合でも、何かの時のために発行を依頼しておくことをオススメします。
また退職証明書は転職先で提出を求められることがあるので、転職先が決まっていても発行を依頼してください。
住民税の支払い手続き
退職する前に住民税の支払い手続きをしましょう。
これは自己都合で退職する場合も、会社都合で退職する場合も必要な退職手続きです。
- そもそも住民税ってどうやって支払ってるの?
-
住民税は毎月の給料から会社が天引きして、従業員の代わりに納付しています。
具体的には、前年1月〜12月までの所得にかかる住民税を6月〜翌年5月までの12ヶ月に分割して納付しています。退職するときに、これから天引きされる予定だった住民税の支払い方法を選ぶ必要があります。
【転職先が決まっている場合】
退職日までに、転職先でも給料から住民税を天引きしてもらうように会社に手続きを依頼します。
依頼をしないと、個人宛に住民税の納税通知書が送られてきて自分で住民税を納付することになります。
【転職先が決まっていない場合】
退職日によって住民税の徴収方法が変わります。
退職日 | 住民税の徴収方法 |
1月1日〜4月30日 | 退職する月から5月までの分の住民税をまとめて、退職月の給料から天引き |
5月1日〜5月31日 | いつも通り5月分の住民税を5月分の給料から天引き |
6月1日〜12月31日 | いつも通り退職月分の住民税を退職月の給料から天引き |
退職日によって住民税の支払い方法に選択肢があるので、退職日までに自分に合う方法を選んで会社に手続きを依頼します。
退職日 | 支払い方法の選択肢 |
1月1日〜4月30日 | まとめて支払う住民税が退職月の給料より多いときは、退職後に自分で毎月1ヶ月分を納付する方法を選択できる。 |
5月1日〜5月31日 | 選択肢なし。 |
6月1日〜12月31日 | 退職月の翌月分から翌年5月分の住民税をまとめて退職月の給料から天引きしてもらうことがでる。 |
会社で利用している制度の終了手続き
自己都合で退職する人も会社都合で退職する人も、会社で利用している制度がないかを退職日までに確認して、終了手続きを済ませます。
社宅などの他にも、以下のような社内制度を利用している可能性もあります。
退職前に確認しておくべき社内制度
- 401確定拠出年金
- 財形貯蓄
- 社内融資
- 提携ローン
401確定拠出年金で企業が掛け金を拠出していた場合は退職すると利用ができなくなることがあります。
財形貯蓄は会社が行なってくれる定期預金です。継続して利用したい場合は転職先でも利用できるかどうかを確認する必要があります。
社内融資や提携ローンなども利用しているならそれぞれ手続きが必要です。利用している制度を退職前に確認しておきましょう。
退職時に会社へ返却するものについて
退職日は会社へさまざまなものを返却したり、書類を受け取ったりなど忙しい1日となります。
返却するものを会社に事前に確認して把握しておきましょう。そうすることでスムーズに退職日を迎えることができます。
一般的に退職時に返却するものは以下のとおりです。
退職時、会社へ返却するもの
- 健康保険証
- 名刺(顧客のものも含む)
- 社員証・社章・入館証など
- 定期券
- その他書類・備品
制服があるなら、当日着ている分はクリーニングに出して後日郵送しましょう。
会社で購入したものや作成したデータ、書類などもすべて会社に返さなければなりません。
返却物は会社によって異なりますので事前に社内で確認しておきましょう。
退職後の手続きについて
退職後の諸々の手続きは基本的に退職日から14〜20日以内に済ませるよう定められています。
年金や健康保険の切り替えなど、退職後14日が過ぎないように早めに行うようにしてください。
ここでは、以下2つの場合の手続きについて解説します。
転職先が決まっている場合の退職後の手続き
転職先がすでに決まっていて、退職日の翌日から勤務する場合は、転職先に提出する書類がそろっていればOKです。
転職先に提出する書類
- 雇用保険被保険者証
- 年金手帳
- 源泉徴収票(退職後1ヶ月以内に前職から送られてきます)
上記3つの書類を新しい勤務先に提出します。
ただし、源泉徴収票は退職後1ヶ月以内に退職した会社から送られてくるケースもあります。
源泉徴収票届き次第提出すれば大丈夫です。
また上記以外の書類が必要な場合もあるので、転職先の会社によく確認してください
転職先が決まっていない場合の退職後の手続き
転職先が決まっていない場合、または転職先が決まっているものの入社まで日数があく場合には役所に行って諸々の手続きを自分で行う必要があります。
退職後の手続き
失業保険の申請手続き
失業保険に加入しれば、給付金を受け取る権利があります。
ハローワークでの失業保険の申請は退職した会社から離職票を受け取ってからになります。
通常は、退職日の7日〜10日後に受け取ることができます。
失業保険の申請に必要なもの
- 離職票(1・2)
- 雇用保険被保険者証
- 本人確認書類
- マイナンバーを確認できる書類
- 印鑑
- 預金通帳またはキャッシュカード
- 証明写真2枚
以上の書類一式を持って、市町村のハローワークで求職の申し込みをします。
その後ハローワークが失業保険の受給資格を決定します。
あとは、指定された日に雇用保険受給者初回説明会に出席して、失業認定日が知らされます。
そして、失業認定日にハローワークに行って、通常その第5営業日後に給付金が振り込まれる、という流れになっています。
最初の給付金が振り込まれるまでの期間は、退職理由の違いによって違います。
- 会社都合で退職した場合は約1ヶ月後
- 自己都合で退職した場合は約4ヶ月後
健康保険の手続き
退職後の健康保険は下記3つのいずれかに加入することを選んで手続きします。
- 任意継続健康保険
- 国民健康保険
- 家族の健康保険
どの保険に加入しても、医療費の負担割合は3割です。
【任意継続健康保険】
在職時の健康保険に引き続き加入して、最長2年まで利用できます。
ただし、保険料は高くなります。
退職日の翌日から20日以内に申請します。
申請する場所は加入している保険によって異なるので、退職する前に会社に確認しておきます。
【国民健康保険】
国民健康保険に加入する場合は、退職日の翌日から14日以内に住んでいる市区町村役所の国民健康保険担当窓口で申請します。
申請に必要な書類は下記のうちどれか一通
- 健康保険被保険者資格喪失証明書
- 退職証明書
- 離職票
国民健康保険の保険料は市区町村によって違います。
【家族の健康保険】
要件を満たせば、家族が加入している健康保険に被扶養者として加入できる場合もあります。
家族の勤務先に詳しいことを問い合わせてみましょう。
年金の手続き
退職したら、国民年金を「第2号被保険者」から「第1号被保険者」に変更する手続きをします。
転職先が決まっていても、退職後すぐに勤務しない場合は、やはり「第1号被保険者」に変更手続きしてください。
手続きは、退職後14日以内に住んでいるところにある市区町村役所の国民年金窓口でできます。
配偶者が「第2号被保険者」の場合は、被扶養者として「第3号被保険者」に変更することもできます。
申請に必要なものは下記の3つです。
年金種類の変更手続きに必要なもの
- 年金手帳
- 印鑑
- 離職票や退職証明書など退職日を確認できる書類
【国民年金には3種類あるの?】
第1号被保険者: 国民年金だけに加入している人。自営業、学生、無職の人。
第2号被保険者: 国民年金と厚生年金や共済組合に加入している人。会社員、公務員。
第3号被保険者: 第2号被保険者に扶養されている配偶者で年収が130万円未満の人。
確定申告
退職後その年に再就職しない場合には、確定申告をします。
手続きは、確定申告期間(通常2月半ば〜3月半ば)に住んでいる所を管轄する税務署で行います。
前の勤務先から送付される源泉徴収票が必要なので、無くさないように保管しておきます。
退職手続きに必要な書類を把握しよう
退職手続きのために、たくさんの書類を退職する会社に準備してもらう必要があります。
退職手続きに必要になる書類は以下の通りです。
退職手続きに必要な書類
- 雇用保険被保険者証
- 年金手帳
- 健康保険被保険者資格喪失証明書
- 退職証明書
- 離職票
- 源泉徴収票
どれも欠けてはいけない大切な書類です。
そして、書類の種類によって退職日までに受け取る書類と、退職後に受け取る書類があります。
以下で詳しく説明していくので、それぞれの書類がどんな役割を持っているのかを把握しておきましょう。
退職日までに受け取る書類
退職日までに会社から受け取る書類は以下の4種類です。
- 雇用保険被保険者証
- 年金手帳
- 健康保険被保険者資格喪失証明書
- 退職証明書
雇用保険被保険者証
【雇用保険被保険者証のイメージ】
雇用保険被保険者証は、雇用保険に加入していることを証明する書類です。最初に就職した会社が雇用保険被保険者証を発行して、保管しています。
雇用保険被保険者証は以下の条件にあてはまる場合のみ発行されます。
雇用保険被保険者証が発行される条件
- 1週間の所定の労働時間が20時間以上
- 31日以上雇用され続ける予定である
なので、1日の労働時間が短いアルバイトや1ヶ月以内の短期契約の場合には雇用保険に入らないので、雇用保険被保険者証は発行されません。
そして、雇用保険被保険者証は退職日までに退職者に手渡されます。
雇用保険被保険者証は退職後に以下の手続きの時に必要になります。
- 転職先で入社手続きをするとき
- 失業保険を申請するとき
年金手帳
年金手帳は、加入している国民年金と厚生年金を記録する書類です。
そして、年金手帳は退職後に以下の手続きの時に必要になります。
- 転職先で入社手続きをするとき
- 国民年金をす「第2号被保険者」から「第1号被保険者」または「第3号被保険者」に変更するとき
年金手帳は会社が保管している場合と個人で保管している場合があります。
健康保険被保険者資格喪失証明書
健康保険被保険者資格喪失証明書は、退職者が健康保険の被保険者としての資格を失ったことを証明するための書類です。
退職後の転職先が決まっていない場合、健康保険の手続きをする時に必要になります。
退職証明書
退職証明証は公的なものではなく、「従業員が辞めた」ということを証明するために会社が独自で作成する書類です。
そして、退職証明書は必ず利用する書類ではないものの、退職する従業員に必ず発行するという会社もあります。
退職証明書は、転職先で提出を求められることがあります。
また、退職後に健康保険に加入するときや年金の変更つつづきをする時に、退職したことを証明する書類として使うことができます。
退職後に受け取る書類
退職後に元の勤務先から受け取る書類は以下の2種類です。
両方とも必要な書類ですので、届かない場合は退職した会社にすぐに確認します。
離職票
離職票の正式名は雇用保険被保険者離職票といって離職票1と離職票2の2種類があります。
【離職票1のイメージ】
【離職票2のイメージ】
離職票は失業保険の給付金を申請する時に必要です。
また健康保険に加入するときや年金の変更手続きをする時に、退職したことを証明する書類として提出することもできます。
転職先が決まっている人には離職票は必要ないのですが、念のために会社に発行を依頼しておきましょう。退職後に離職票の発行を依頼できるのは退職日から10日以内だけだからです。
源泉徴収票
【源泉徴収票のイメージ】
源泉徴収票は退職後1ヶ月以内に発行されます。退職日に手渡される場合や、退職後会社から郵送されてくることもあります。
源泉徴収票は転職先に源泉徴収票を提出します。また退職した年の12月31日までに再就職しない場合は確定申告をする時に必要になります。
退職手続きは計画的に進めよう!
退職手続きには意外と時間がかかってしまうことがあります。そのため、退職日から逆算して計画を組んでおくことが大切です。
ここでは、退職を計画的に進めるためにやっておきたいことについて説明します。
退職を決めたら作っておきたいもの
- チェックリスト
- 退職手続きのスケジュール
この上記2つはぜひ作成しておいてください。
チェックリストを作っておく
退職に受け取るべき書類・返却するべきものをそれぞれチェックリストとして作成しておきましょう。
受け取ったものから消していき、受け取り忘れがないようにしましょう。
また備品などを返却し忘れると後日再度オフィスに行かなければならなったり、郵送したりと二度手間になってしまいます。
退職手続きのスケジュールを組む
退職手続きのスケジュールを組みましょう。最低でも退職予定日の1〜2ヶ月前には会社に通知しておきましょう。
その後、引き継ぎや取引先への挨拶などを退職日の1ヶ月〜2週間前から取り掛かる必要があります。
退職後、転職先が決まっていないなら、各種手続きをする予定も一緒に組んでおくと安心です。
\退職で悩んでいるなら/
退職手続きマニュアル まとめ
退職すると、さまざまな書類を受け取らなくてはいけません。
以下の書類を退職時に受け取ることを忘れないようにしてください。
退職時に受け取る書類
- 雇用保険被保険者証
- 源泉徴収票
- 離職票
- 退職証明証
- 健康保険被保険者資格喪失証明書
- 年金手帳
ぜひこの記事を保存して退職時の参考にしてください。
とくに次の転職先を決めないで退職すると、その後の手続きをすべて自分でやらなければなりません。
大変ですが、事前に手順を把握しておき、スムーズに進められるようにしておきましょう。