行政書士資格合格の難易度について解説
行政書士は行政等への書類を作成したり代行で提出してくれたりはもちろん、日常で起こりうるトラブルに対しての相談窓口として活躍するサポートに特化した資格です。
本記事では「行政書士の難易度」について、「過去5年間の行政書士試験受験者と合格率から見る難易度」「行政書士はなぜ難易度が高いと言われているのか」「法律系国家資格から見た難易度」をご紹介します。
「エーマッチ」編集長。
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過去5年間の受験者と合格率から見る行政書士の難易度
まずは過去5年間の受験者数と合格率から行政書士の難易度を見ていきましょう。
年度 | 受験者数 | 過去5年間の行政書士試験合格率 |
---|---|---|
令和3年度 | 47,870人 | 11.18% |
令和2年度 | 41,681人 | 10.72% |
令和元年度 | 39,821人 | 11.48% |
平成30年度 | 39,105人 | 12.70% |
平成29年度 | 40,449人 | 15.72% |
平成28年度 | 41,053人 | 9.95% |
この表を見ると受験者数と合格率は過去5年でそこまで大きな変化はありませんでした。
数字だけを見ると難易度が高い資格のように感じますが、数ある法律系国家資格の合格率から比較するとそこまで難易度が高いとは感じない方もいるでしょう。
しかし、現在は安定している合格率も今後これ以上あがっていくとは限りません。事実最近では司法試験に受験回数制限が出た結果、司法試験合格を目指した方が少しレベルを落としてという意味で行政書士試験を受験しているというパターンも増えています。それであっても合格率に大きな変化がないということは難易度自体は上がっていると考える方もいるでしょう。
行政書士の難易度が高いと言われる理由
受験者数と合格率を見てみると、行政書士の合格率は低い傾向です。しかし「行政書試験はコツさえ覚えれば一発合格だってできる!」と話す方も。
では一体行政書士の難易度が高いと言われる理由は何でしょうか。ここでは行政書士の難易度が高いと言われる理由を独自に考察していきます。
受験資格がない分、合格率が低くなっている可能性がある
まず、行政書士は受験資格に制限がありません。そのため何歳でもどんな方でも受験することができるため、お試し受験という感覚で受験をする方も多いでしょう。
以上を踏まえて、上記で紹介した受験者の中には本気で行政書士試験合格を目指している方だけではなく、気軽に受験している方も多いため、結果的に合格率は低くなっているのかもしれませんね。
独占業務だからこそ試験内容は範囲が広く難しい
次に、行政書士には「官公署に提出する書類および事実証明・権利義務に関する書類の作成代理」という独占業務があります。
この業務は行政書士以外が行うことはできませんが、分野ではない法律に関する書類の場合は行政書士の対応外です。(例:司法書士の独占業務である登記書類作成等)
独占業務がある行政書士だからこそ、学ぶ範囲や試験の範囲が広く法律初学者の場合は難しいと感じてしまうのかもしれません。
試験科目ごとに難易度や配点がバラバラ
その他にも行政書士の難易度が高いと言われる理由は試験科目ごとに難易度や配点がバラバラであることも挙げられるでしょう。
以上を踏まえてどの分野に重点を置いて勉強をするかをしっかり見極めないと、どんなに頑張っても合格基準をクリアすることが難しくなります。
働きながら受験する人が多いので勉強時間の確保がそもそも難しい
行政書士試験を受験する方の中には仕事の合間に勉強をしているという方もいます。
その方々にとって、毎日決まった時間に勉強することが難しく、結果的に勉強不足で試験に合格することができない…という可能性もあるでしょう。
合格基準は300満点中180点
また行政書士試験で合格するためには3つの条件をクリアしていないといけません。
- 行政書士の業務に関し必要な法令等科目の得点が、122点以上(満点の50%以上)である者
- 行政書士の業務に関連する一般知識等科目の得点が、24点以上(満点の40%以上)である者
- 試験全体の得点が、180点以上(満点の60%以上)である者
どれか1つを満たしても合格にはならず、この3つをクリアすることで合格です。
そのため、明確な合格基準をしっかりと把握して勉強することが重要となります。
単純に試験難易度が上がっている
先ほど、受験者数と合格率について説明した際にもお話ししましたが、近年合格率に大きな変化はありません。
しかし、受験者の中には既に他の法律系国家資格を目指して勉強してある程度の知識がある方が試験を受験していることも考えられるでしょう。
それでも合格率に変化がないということは、行政書士試験の難易度が上がってきている可能性も考えられます。
法律系国家資格から見る行政書士の難易度
それでは最後に、難易度が高いと言われる法律系国家資格から見る行政書士の難易度を見ていきましょう。
司法書士
1つ目の法律系国家資格は「司法書士」です。司法書士試験の詳細は以下の「令和3年度司法書士試験」グラフをご覧ください。
試験名 | 司法書士試験 |
受験資格 | なし |
試験内容 | ☆筆記試験☆
☆口述試験☆
|
合格率/受験者数 | 5.14%(11,925人) |
合格基準点 | 208.5点以上(181.0点)+基準点に上乗せで必要な点数/27.5点以上 |
司法書士試験は令和3年度の合格率5%で令和2年度が5.17%、令和元年度が4.39%といずれにしても行政書士の更にはるか上を行く難易度と言えるでしょう。
なぜこんなに合格率が低いのかについて、司法書士試験の筆記試験は午前・午後、どちらにおいても基準点による足切りが行われます。そのため、どれか1つでも一定の基準に満たなければそこで試験終了となる非常に厳しい戦いとなっています。
税理士
2つ目の法律系国家資格は「税理士」です。税理士は司法書士と並ぶ難関資格と言われています。税理士試験の詳細は以下の「令和3年度税理士試験」グラフをご覧ください。
試験名 | 税理士試験 |
受験資格 |
【資格による受験資格】
【職歴による受験資格】
引用:日本税理士会 |
試験内容 |
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合格率 | 18.8%(27,299人) |
合格基準点 |
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税理士の合格率は18%台と行政書士と比べれば難易度は低く感じます。
しかし、5科目すべてを合格するためには5~10年の勉強が必要とされると言われており、司法書士と並んで超難関と言われても納得のいく資格です。
合格率が18%というのは、相当な時間を勉強に費やし万全の状態で挑んだ受験者だからこそだと言えます。
公認会計士
3つ目の法律系国家資格は「公認会計士」です。医師や弁護士と共に3大資格と呼ばれる資格となっています。公認会計士試験の詳細は以下の「令和3年度公認会計士試験」グラフをご覧ください。
試験名 | 公認会計士試験 |
受験資格 |
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試験内容 |
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合格率 | 9.6%(14,192人) |
合格基準点 |
|
公認会計士試験の合格率は9.6%と発表されていますが、欠席受験者もいたため本来はもう少し合格率が高いのでは?と言われています。
しかし、勉強時間は行政書士の最短勉強時間の5倍である約3,000時間とも言われる難関資格です。
合格率と難易度は比例していないこともある
3つの資格をご覧いただいて、行政書士よりも合格率が高くても勉強時間が果てしない長さであったり、逆に合格率が低くても勉強のコツさえ掴めば合格率とは比例しなかったりするということがわかります。
以上を踏まえて、誰しも資格勉強を始める際は「合格率ってどの位なのだろう」と軽い気持ちで合格率を見る方も多いかと思いますが、合格率が高くてもそこまでに至る過程が難関である可能性もあるでしょう。
そのため、合格率でその資格が本当に難関か、頑張れば合格できるのかは判断できません。
まとめ
今回は行政書士の難易度についてご紹介しました。
合格率から見ると「自分にも受かるのかな」と不安になる方もいるかと思いますが、まずはテキストや過去の試験内容を見てなんとなく難易度を把握してみることが大切です。
「行政書士よりもこっちの方が合格率高いから」と選んだ資格が実は行政書士よりも難易度が高い可能性もありますし、逆も然りと言えます。
今行政書士に興味をお持ちの方は、合格率での難易度に惑わされないように気を付けて試験勉強に挑んでくださいね。